作品をより高いレベルにするためのコラボレーション

 HOMMA氏にも、私の考え方に強く賛同していただいている。その賛同の中で、私は彼の撮影に立ち会い、より撮影後の手直しを必要としない撮影を追求している。

 RAW現像やレタッチは、マイナスをゼロにするのが目的であってはならない。ゼロをプラスにするためのものでありたいと考えている。粗をなくすためではなく、作品をより高いレベルにするためのものでありたい。
 それだけに撮影が大切であり、だからこそ積極的に撮影現場に立ち会っている。フォトレタッチャーの立場から、写真の最終形をイメージしながら、現場でのアドバイスをさせていただくのだ。
 もちろん、立ち会い前に綿密な対話を行い、撮影者が求める画を十分に理解しておくことは言うまでもない。

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2012.4.22

 またレタッチというと、肌修整や合成といったものが想像されがちであるが、そればかりではない。むしろ、暗室でプリントを焼いていた作業こそがフォトレタッチであると考えている。「主題は何か」「何を見せたいか」「どう視点を誘導させたいか」…そういう切り口である。

 RAWデータは画像ではない。「RAW画像」という言葉を目にすることがあるが、これは誤用であると考えている。現像処理のプロセスを考えても、RAWデータはまだ画像ではない。現像を行うことで初めて画像化される。そしてその現像ひとつで、出力されるものが「ただの画像」になるか「写真」となるかが変わると考えている。
 「RAWデータ」あるいは「ただの画像」を「写真」へと昇華させるのが、RAW現像でありレタッチである。

 さらに言うと、RAWデータはある意味、素材である。いい素材を生かすも殺すも料理次第だ。せっかくの良い素材も料理が下手では台無しになるし、悪い素材は料理である程度改善できても限界がある。いい素材でシンプルな料理をし、最高のものに仕上げるのがベストだ。だからRAW現像は、RAWデータの良さを引き出すものでありたい。同時記録のJPEGより質が悪かったら、わざわざRAWデータから現像をする意味がない。

 そんな持論をコラボレーションにおいて検証したいと考えていた。
 私の中で、コラボレーションの意味が大きくなっていった。

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