自分の得たい画に合った道具を選ぶ

 2013年8・9月に渋谷で行った撮影には、もう一つの目的があった。それは、中判デジタルバック更新のためのテストである。
 HOMMA氏が銀塩からデジタルにカメラを切り替えて以来、35mm判デジタル一眼レフはN社一筋で使用しているが、スタジオ撮影やクオリティが求められる撮影には、M社の中判デジタルバックを使用していた。これを今後に向けて更新したいということで、P社、L社、H社と、これでもかというまでにデモ機を借用し、テストを行ったのだ。
 HOMMA氏は私に対してかなりの信用を置いてくださっており、テストの実施とその検証をともに行っていった。
 検証の内容については、このコラボレーションの趣旨から逸れるので割愛するが、一つ大切なことを記しておきたい。

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2013.10.27

 カメラが違えば、レンズが違えば、現像ソフトが違えば、どうやったって同じ画は得られない。
 「RAWで撮れば現像でどうにでもなるから、どのカメラを使っても変わらない」という人がいるが、それは違う。今回のテストでそれは明確であった。
 もちろん、RAW現像によって「それなりに同じような」画は得られる。しかしそれは「似て非なるもの」なのだ。全体の雰囲気が良ければいいわけではない。細かな階調や質感も重要であり、そこまで同じにすることは無理なのだ。

 したがって、自分の得たい画に合った道具を選ぶ必要がある。
 銀塩時代、フィルムや印画紙をいくつも試して自分に合うものを選んでいたはず。まして、淡い写真をベルビアで撮ろうなんて普通のことではなかったはずだ。
 それがデジタル時代になってどうだろう。気になる機種をとことん試用して、自分に合うものを選んでいるだろうか? 柔らかいライティングでもどうしても硬調になってしまうRAWデータを、現像で無理に軟調にしていないだろうか?

 自分の得たい画が得られる道具を選ぶこと、自分の作風に一番合った道具を選ぶことは当然のことであり、その作風と方向の違う道具を無理に使うことは、撮影後に無駄な時間を発生させるだけである。中判デジタルだとしても、いや、中判デジタルだからこそ、導入の際には各社各機種を比較してほしい。仕事の効率化はそこから始まっている。

 さて、そうしてHOMMA氏は、M社の中判デジタルバックから、一気に飛躍してP社のフルサイズ中判デジタルバックへ道具を持ち替え、さらにジェネレータータイプのストロボまで新調した。ともに検証を繰り返し、ホンマ・フォトに最も適していると選択した道具で、今後もさらに得たい画を得るために、定期的に撮影を行っていく。
 この成果は、写真展あるいは写真集としての発表を考えている。
 Webでの発表は、ひとまずその経過報告と、コラボレーションの記録としたい。

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