ATSF 〜spring ’14 レポート

 親しくさせていただいている、フォトグラファーの西村一光さんが代表を務める写真事務所「AshCreate」の作品制作企画「ATSF(AshCreate Test Shooting Festa)〜spring ’14」に、フォトレタッチャー兼グラフィックデザイナーとして参加しました。
 2014年5月7日から17日まで、東京原宿のHasselblad Store Tokyoにて作品展示、最終日にはイベントを開催しました。

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 ATSFが具体的に動き出したのは、2月28日、Twitterにおける西村さんの「今の研究生で作品撮り祭やるか」というツイートに、AshCreateがいつもお世話になっている写真・映像機材商社であるアガイ商事の水野さんが「是非配信しましょう。光なら貸します」とリプライを発信したところからだと私は認識しています。
 その後すぐ、3月1日昼からAshCreateの事務所でミーティングが実施されました。このスピード感はさすが西村さんだと感じます。その後西村さんは各方面に相談に動き、西村さんが2008年から仕事で使用している中判デジタルカメラメーカーの日本法人、ハッセルブラッド・ジャパンからの協力も取り付けたのだと思います。

 そこから、制作ワークフロー設計、イベント企画、ロゴデザイン、日程決定、メイキングムービー制作決定、撮影、図録制作、テストプリント、レタッチ、本番プリント、パネル貼り、キャプション制作と、関係者一人一人がそれぞれ尽力して、2ヶ月という制作期間で最高のものをつくり上げることができました。


【Hasselblad×broncolor】

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 今回のATSFにおいて見逃せない点の一つとして、ハッセルブラッド・ジャパンとアガイ商事の協賛により、全てのフォトグラファーがHasselbladの中判デジタルカメラ・レンズを使用し、ストロボを使用するフォトグラファーはbroncolorのストロボを使用したというものがあります。

 どちらもAshCreateで使用しているブランドであり、撮影機材としては最高レベルのものです。研究生も参加する作品撮りですが、参加者全員にこの最高の機材を貸し出すことで、「機材に言い訳がきかない状況下で、作品制作に向き合う」環境を西村さんは用意しました。

 またこれは同時に、同じ写真事務所のフォトグラファー同士がHasselbladとbroncolorを使うという前提条件の中で、いかに自らの表現を追求するかというテーマがフォトグラファーに課せられるものでもあります。

 レタッチャーの視点からは、この機材群を使うことによる画質、描写への寄与は大きく、作品のアウトプットクオリティを高水準に仕上げることに効果をもたらしています。ハイライトの微妙な調子再現が求められる作品や、シャドーの微妙なディテールや色味にこだわった作品もありましたが、十分な表現ができました。

 来場者に感想を聞いてみても、中判デジタルカメラによる撮影や、クリップオンやモノブロックではないbroncolorのストロボライティング、またフォトレタッチについて関心をお持ちの方が多く、美術的側面にとどまらず、技術的側面においても意義のある作品制作企画となりました。


【フォトレタッチャーとして私が担当したもの】

[制作ワークフロー設計]
 どんな日程でどんな作業を、どのような段取りで進めるか、作品と図録の制作をセットで設計しました。

[撮影立ち会い]TT1_1322
 フォトグラファーからの要望に応じて撮影に立ち会い、ライティングの相談や露出の確認などを行いました。

[写真作品カラーグレーディング]
 全てのフォトグラファーではありませんが、RAW現像にてカラーグレーディングを行いました。

[テストプリント]_DSF3011
 事務所に一日こもり、フォトグラファー一人一人と対話しながら、立ち会いでレタッチを行い、納得のいくプリントを仕上げました。

[レタッチ]
 テストプリントでOKとなったデータに、レタッチを施しました。

[本番プリント]05_DSC6070
 テストプリントでOKとなったものが展示プリントで再現できるよう、色調調整を施しつつ、展示用A2プリントをレンタルデジタルラボで出力しました。

[図録執筆、トークイベント出演]
 フォトグラファーとしての参加ではないので、本来主役のポジションではないのですが、西村さんは私も「参加者」として位置づけてくださいました。 図録に2ページをいただき、トークイベントでもフォトグラファーと同じ時間、それも大トリの位置をいただき、レタッチャーとしてどのように制作に関わったかということを紹介しました。
B8417797 トークイベントでは多くの方が熱心にお話を聴いてくださり、話の中での反応も多くいただけて嬉しかったです。思っていたよりも上手く話すことができ、「私が考える『フォトグラファーとレタッチャーのコラボレーション』の理想形をお見せする」とお知らせで書きましたが、それが達成できたのではないかと思います。
 ハッセルブラッド・ジャパンのウィリアム社長による締めのご挨拶では、中判デジタルの良さについて触れた私のトークについて「その通りなんです」と取り上げてくださり、とても嬉しかったです。


【グラフィックデザイナーとして私が担当したもの】

[ロゴデザイン]ATSF
 西村さんからの意向を汲み、ATSFロゴタイプのデザイン、制作を行いました。
 いろいろな場面で目にしましたが、どの場面でもマッチするものができたと思います。

[タイポグラフィー設計]
 地味な工程ですが、ATSFに関係するデザインに共通する、書体や文字の組み方について設計しました。ATSFのグラフィックデザインは全て同じポリシーで制作しています。

[図録制作]TT1_3538
 図録の編集、デザイン、制作、印刷会社とのやりとりを行いました。
 ただの写真集ではなく、AshCreateの会社案内にも使えるくらいの読み物を目指しました。展示作品だけでなく、アナザーカットやメイキング写真、フォトグラファーとレタッチャーによる解説を盛り込みました。これが一番大変な作業でしたが、すごく良いものが出来ました。A5判、オフセット印刷、オールカラー34ページです。(AshCreateで通販を行っています。http://ashcreate.theshop.jp/

[キャプションパネル制作]
 会場にて掲示する、代表挨拶、フォトグラファープロフィール、作品下の名札パネルを制作しました。

[メイキングムービーのタイポグラフィー監修]
 メイキングムービーのエンドロールは文字が多く、少し複雑な構成になるため、ムービーの監督やエディターさんと相談しながら、データの受け渡しもしつつ、美しいタイポグラフィーになるように監修しました。



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【最終日のイベント:図録販売】

 図録を販売しました。ハッセルブラッド・ジャパンさんの計らいで、購入者へのプレゼントしてハッセルのトートバッグとステッカーを提供していただきました。制作者も驚くほど購入していただき、感謝です。現在AshCreateで通販を行っています。(http://ashcreate.theshop.jp/)また、アガイ商事さんでも期間限定で販売を行っていただいています。
 7セット限定で展示作品の2L判オリジナルプリント(計6枚)が付いた特別版も販売しました。問い合わせが多く朝から整理券を配布、比較的早い時間で完売しました。販売は西村さんの奥様が担当してくださいました。ありがとうございました。

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【最終日のイベント:トークショー開催】

 一人15〜20分の持ち時間で、フォトグラファーによる作品解説と、レタッチャーからどのように制作に関わったか、トークをさせていただきました。
 プレゼンに慣れていない人もいましたが、それぞれその人らしいトークが展開されました。たくさんの方が訪れてくださり、嬉しかったです。
 トークイベントはUstreamで生配信しました。このためにアガイ商事さんからHMIを貸していただき、とても助かりました。初めての試みでしたが、知見のある方からのサポートをいただき、配信を行うことができました。
 Ustreamのアーカイブ配信については、現在前向きに検討中とのことです。決まり次第お知らせします。


【最終日のイベント:メイキングムービー上映】

 AshCreate卒業生で、現在映像制作会社に所属する中川徹哉さんが監督となり、エディターの宮川尚子さん、太田三菜さんとともに、多大な苦心をもってカッコいいムービーを制作してくださいました。
 当日の上映では、予期しなかったトラブルがあったものの、ムービークルーの懸命の対処と、その場にいた知見のある方からの助けで、最高画質で上映できました。
 Web版をYouTubeで公開していますが、Hasselbladの動画サイト「Hasselblad tv」に当日上映版がアップされました。


【開催概要】

「ATSF ~spring ’14」
 ◎日程:2014年5月7日(水)~17(土)
 ◎会場:Hasselblad Store Tokyo
 ◎参加フォトグラファー:西村 一光、本間 裕介、東倉 嵩典、豊永 拓万、山口 真由子、吉屋 亮
 ◎デジタルイメージング・クリエーター:芳田 賢明
 ◎協賛:ハッセルブラッド・ジャパン株式会社、アガイ商事株式会社
     機材や会場、スタジオなど、数多くのリソースを提供、全力のサポートをいただきました。感謝いたします。

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 なかなか大変でしたし、いろいろありましたが、やっぱりこういうのは楽しいです。
 ただモノをつくるだけじゃなくて、一緒につくる人、協力してくれる人、サポートしてくれる人、応援してくれる人、見に来てくれる人がいて、そういう人たちがいるから、エキサイティングで楽しい。
 「大人の文化祭」って最高です。

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